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国土戦略行政書士事務所
KOKUDO STRATEGY LEGAL OFFICE
COLUMN / LICENSING

障害者グループホームを
開設するまでのフロー
── 指定申請までの
6〜12ヶ月ロードマップ

グループホームは「許可」ではなく「指定」。
構想から運営開始までのフェーズを整理して、逆算で動くと開設までの手戻りが激減します。

障害者グループホーム 指定申請 共同生活援助

「許可」ではなく「指定」──ここが最初のつまずきポイント

障害者グループホーム(障害福祉サービスにおける共同生活援助)を始めたい、というご相談を受けると、まずここから整理する必要があります。

多くの方が「グループホームの許可を取りたい」と言われるのですが、制度上は「許可」ではなく「指定」という手続きです。これは飲食店の営業許可や建設業許可とは仕組みが違います。

  • 許可:法律で禁止されている行為を、行政庁が個別に解除するもの
  • 指定:一定の基準を満たした事業者を、行政庁がサービス提供者として認定するもの

障害者グループホームは、障害者総合支援法に基づく「共同生活援助」というサービスの指定を受けることで、初めて事業として運営できます。指定申請の窓口は都道府県または政令指定都市(東京23区は東京都、政令指定都市はその市)です。

「指定」という制度の性質上、事前に決められた基準を全部満たしていることを、書類と現場で証明する必要があります。逆に言えば、基準を淡々とクリアしていく作業とも言えます。

※ 本記事の要件・数値は、執筆時点の一般的な指定基準を筆者が整理したものです。都道府県・政令指定都市ごとの条例で運用差があり、また制度改正で変更される場合があります。実際に開設を検討される際は、所轄の障害福祉担当窓口の最新情報を必ずご確認ください

開設までの全体像は6〜12ヶ月

障害者グループホームの開設は、構想段階から実際の運営開始まで、おおむね6〜12ヶ月を見ておくのが現実的です。都道府県や物件の状況、法人の設立段階によって前後します。

開設フェーズ ── 並行で進めると6〜9ヶ月、直列だと12ヶ月超 1 2 3 4 5 6 7〜9 運営開始 ① 構想・法人準備 事業計画・類型選択・法人設立 ② 物件・設備 物件選定・内装・消防・バリアフリー ③ 人員配置 サビ管確保・世話人/支援員採用 ④ 事前協議・書類 自治体協議・書類作成 ⑤ 現地調査・指定 現地確認・指定 ⑥ 運営開始 OPEN サビ管確保は開設意思決定と同時に動き始めるのが現実的
図1:開設までの6〜12ヶ月ロードマップ(各フェーズを並行で回すのが基本)

このフェーズを、順番通りに直列で進めると1年以上かかることがあります。実務的には、いくつかの工程を並行で進めるのが基本です。

フェーズ①:法人・事業目的の準備

グループホームは、個人事業では開設できません。株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人・一般社団法人など、法人格を持っていることが指定の前提条件です。

さらに、法人の定款の事業目的に「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業(共同生活援助)」など、当該事業を明確に記載しておく必要があります。既存法人で始める場合、定款変更が必要になることもあります。

このフェーズで決めておきたいこと:

  • 法人格の選択(新設か既存法人か)
  • 定款事業目的の整備
  • サービス類型の選択(後述の3類型)
  • 想定利用者の障害区分(身体・知的・精神・難病、区分の範囲)
  • 開設予定地域(都道府県ごとに事前協議の運用が違う)

フェーズ②:物件・設備の確保

物件選びは、指定申請で最も詰まりやすいフェーズです。要件を満たさない物件を契約してしまうと、指定が下りずに家賃だけが出ていく事態になります。

主なチェックポイント:

  • 居室要件:原則1人1居室。1室あたり収納設備を除き7.43㎡以上(自治体によって若干の運用差)
  • 共用設備:食堂・浴室・トイレ・洗面所・台所などを利用者数に応じて確保
  • 消防設備:スプリンクラー・自動火災報知設備・避難経路(用途が「寄宿舎」「共同住宅」扱いで消防法の基準が変わる)
  • バリアフリー:段差・手すり・スロープなど、想定する利用者の障害特性に応じた配慮
  • 周辺環境:近隣への説明、通勤・通所のアクセス

⚠ 物件契約の前に、必ず自治体窓口へ

物件契約の前に、必ず自治体の障害福祉担当課と事前相談をしてください。契約後に「この物件では基準を満たさない」と判明すると、契約解除のダメージが大きくなります。

フェーズ③:人員配置の準備

指定を取るためには、必要な人員を確保していることが求められます(実際に雇用契約締結済み、または内定確定)。

主な必要人員:

  • 管理者:常勤1名(他業務との兼務可の場合あり)
  • サービス管理責任者:必要な研修修了者。確保が最大の関門になることが多い
  • 世話人:利用者数に応じて配置(例:介護サービス包括型で利用者6人あたり1人など、類型・区分で異なる)
  • 生活支援員:利用者の障害区分に応じて配置

とくにサービス管理責任者(サビ管)は、指定研修の修了と一定の実務経験が必要な資格で、市場でも不足しがちです。開設の意思決定と同時に、確保に動き始めるのが現実的です。

フェーズ④:サービス類型の選択

障害者グループホームには、大きく3つの類型があります。どれを選ぶかで、人員配置や設備要件が変わります。

障害者グループホーム ── 3つの類型と特徴 介護サービス包括型 標準型 自法人で介護も提供 スタッフを自前で抱える 運営の自由度は高い → 介護人材を確保できる法人向け 外部サービス利用型 外部委託型 介護は外部の居宅介護 事業者に委託 住居と生活支援に集中 → 介護部門を持たない法人向け 日中サービス支援型 24時間支援型 24時間の支援体制 重度障害者にも対応 報酬体系も別 → 重度対応を主軸にしたい事業者向け
図2:3類型 ── 事業計画とスタッフ確保の両方に影響する重要な選択

この選択は、採算構造とスタッフ確保の両方に影響します。単純に「大変そうだから外部利用型」と選ぶのではなく、報酬体系・地域需要・自法人の運営体制を踏まえた判断が必要です。

フェーズ⑤:事前協議・書類作成・指定

物件と人員の目処が立ったら、いよいよ指定申請の実務に入ります。

事前協議

都道府県や政令指定都市の障害福祉担当課との事前協議は、実質的な必須プロセスです。窓口によっては、正式書類の提出前に「協議書」や「開設計画書」を求められます。

事前協議の段階で、

  • 事業計画の妥当性
  • 物件の要件充足性
  • 人員配置の見込み
  • 地域の需要と供給バランス

が確認されます。ここで指摘された事項を潰さないと、正式申請しても現地調査で止まります。

指定申請書類

申請書類は数十種類にのぼります。代表例:

  • 指定申請書
  • 事業所の平面図・写真
  • 運営規程
  • 就業規則・雇用契約書
  • サービス管理責任者の履歴書・研修修了証
  • 利用者からの相談体制・苦情処理体制
  • 会計処理体制の書類

自治体によって様式が違うので、必ず所轄自治体の最新様式をダウンロードして使ってください。

現地調査と指定通知

書類が受理されると、担当官による現地調査が入ります。ここで書類と現場の一致を確認され、問題なければ指定通知が発行されます。

指定通知が出た日から、正式にサービスを開始できる状態になります。多くの自治体では指定日は毎月1日に統一されているので、逆算スケジュールで管理する必要があります。

詰まりやすい5つのポイント

実務で詰まりやすい5つのポイント 1 物件契約を先走る 要件確認前に契約 → 「基準未達」で契約損失 2 サビ管が確保できない 資格者不足で 開設予定日が延びる 3 消防設備の見落とし 用途変更で追加設備 → 内装費が跳ね上がる 4 近隣説明の欠如 地域住民の反対で 事前協議段階で止まる 5 開業資金と指定のずれ 融資は下りたが指定が遅れ 運営前に運転資金が減る 1・3 は「事前協議」を挟むだけで大半を回避できる
図3:実務で詰まりやすい5つのポイントと回避策

実務で開設の相談を受ける中で、特につまずきやすい箇所を挙げておきます。

  1. 物件契約を先走る:要件確認前に契約して、後から「基準未達」で契約損失
  2. サービス管理責任者が確保できない:資格者不足で開設予定日が延びる
  3. 消防設備の見落とし:用途変更で新たな消防設備が必要になり、内装費が跳ね上がる
  4. 近隣説明の欠如:地域住民の反対で、事前協議段階で止まる
  5. 開業資金と指定タイミングのずれ:融資は下りたが、指定が遅れて運営前に運転資金が減る

このうち、1と3は事前協議で潰せます。物件契約の前に自治体窓口と話す、という一手だけで、致命的な失敗の多くを避けられます。

まとめ

制度理解「許可」ではなく「指定」
期間の目安構想から運営開始まで6〜12ヶ月
法人準備法人格必須/定款事業目的の整備
物件事前協議前の契約は絶対NG
人員サビ管の確保が最大の関門
類型介護包括・外部利用・日中支援の3類型から選択
実務事前協議 → 書類 → 現地調査 → 指定通知

障害者グループホームの開設は、「基準をひとつずつ淡々と満たしていく」ことの積み重ねです。派手さはありませんが、逆に言えば、順番通りに進めれば必ず開設まで辿り着けます。

当事務所では、事業計画の相談から、法人設立・定款事業目的の整備、都道府県との事前協議の同行、物件・設備要件のチェック、指定申請書類一式の作成、現地調査への同席、開設後の運営サポートまで、一通りお手伝いしています。 「グループホームを始めたい」と思った段階で、まずは全体像の整理からご相談ください。構想段階の1時間の相談で、後の1年間の手戻りが大きく減ります

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