物件契約と同時にスタートすると、ほぼ間に合いません。
物件・お金・許可の3本を、オープン日から逆算して並べることが、店舗開業の本当のスタートです。
店舗を構えるビジネスを考えている方から、こんな相談をいただくことがあります。
「いい物件が出たので、明日にも契約したいです。お金の話と、許可の話を急いで進めてもらえませんか」
正直に言うと、この時点で相談に来られるともう打てる手が半分以下になります。物件契約のスタートと開業準備のスタートが同じだと、家賃だけが先に発生していき、内装も許可も融資も、すべてが追いつかない状態で開業日を迎えることになるからです。
店舗ビジネスは「物件ありき」で動き出すと、ほぼ確実にお金で苦しみます。 本当のスタート地点は、「いつ、どんな店をオープンするか」を決めて、そこから逆算してカレンダーを引くことです。
逆算カレンダーといっても、複雑なものではありません。「オープン日」を1日決めてしまえば、あとはそこから戻すように、必要なタスクを並べていくだけです。
たとえば「来年4月1日にオープンしたい」と決めたら、次のようなイメージになります。
このカレンダーが頭に入っていると、「いい物件が出たから動く」のではなく、「3月までに引き渡してくれる物件を探す」という探し方に変わります。これだけで、選択肢の幅と精神的な余裕がまったく違ってきます。
店舗ビジネスでは、開業前に3つの別々の仕事を同時並行で進める必要があります。
この3つはまったく別の窓口で進行するので、誰かが全体をつなげて見ていないと、必ずどこかでズレが起きます。物件は契約済み、内装も終わった、でも保健所の許可が下りていない──そんな状態でも家賃は容赦なく毎月発生します。
逆算カレンダーは、この3本をひとつの紙に並べるためにあります。
逆算カレンダーを引く前に、もうひとつやっておきたいことがあります。「開業までにいくらかかるのか」をざっくり書き出すことです。
ここでよくある誤解が、「内装と設備さえ揃えばオープンできる」という思い込みです。 店舗ビジネスは、お客さんがついて売上が安定するまでに数ヶ月かかります。その間も家賃・人件費・仕入れは出ていくので、運転資金を含めた金額で考えないと、開業3ヶ月目に資金ショートします。
総額が見えたら、次は自己資金です。金融機関が一つの目安としているのが、総事業費の20%程度。1,000万円の事業なら200万円というイメージです。
ただし、ここで見られているのは金額そのものより、「どうやってその金額にたどり着いたか」のほうです。
通帳を見れば、どれがどれかは一目瞭然です。前者なら「計画的にこの事業を考えてきた人」と評価されますが、後者2つは「本人のお金じゃない」「本気度が読めない」と判断されることが多くなります。
自己資金は、金額を作ることと同じくらい、「説明できる貯め方をしておくこと」が大事です。
必要なお金が500万円を超えてくると、1つの融資制度でまかなうのは難しくなります。よく使われるのは、次の組み合わせです。
| 日本政策金融公庫の創業融資 | 国の機関。創業者にも話を聞いてもらいやすく、担保・保証人不要の制度あり |
|---|---|
| 信用保証協会の保証付き融資 | 地元の民間銀行から借りる際に、保証協会が保証してくれる仕組み。将来の取引銀行との関係づくりにも◎ |
| 小規模事業者持続化補助金など | 条件に合えば追加でもらえるが、入金は数ヶ月〜1年先になる |
| 自己資金 | 金額と貯め方のセットで「本気度」の証になる |
このうち、補助金は採択されてもお金が口座に入るのは数ヶ月〜1年先になることが多いので、補助金をあてにしてキャッシュフローを組むのは危険です。補助金は「もらえたらラッキー」くらいの扱いで、ベースは融資と自己資金で固めるのが現実的です。
| 動き出すタイミング | 「物件が出てから」ではなく「オープン日を決めてから」 |
|---|---|
| 同時に動かす3本 | ① 物件 ② お金 ③ 許可 |
| 準備期間の目安 | オープン3〜6ヶ月前から |
| お金の総量 | 運転資金(3〜6ヶ月分)を含めて試算する |
| 自己資金 | 金額(総事業費の20%目安)+ 貯め方の説明 |
| 融資戦略 | 公庫+保証協会の2本立てが基本、補助金は当てにしない |
当事務所では、店舗ビジネスの開業準備について、
までを一通りお手伝いしています。 「いい物件が出たから相談」ではなく、「お店を出したいと思った日」にご相談いただくと、選べる打ち手がぐっと広がります。