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国土戦略行政書士事務所
KOKUDO STRATEGY LEGAL OFFICE
COLUMN / SETUP

個人事業から法人化するときに
「リセットされるもの」
と「引き継げるもの」

法人化は「同じ事業の続き」ではありません。
何が失われ、何が引き継げるかを最初に棚卸しすると、法人化前後がぐっとスムーズになります。

法人化 会社設立 許可・融資の引継ぎ

法人化は「同じ事業の続き」ではない

個人事業として何年かやってきて、いよいよ法人化を考える。 そんなとき、多くの方がこう思っています。

「中身は同じ事業だから、看板を会社に変えるだけ」

ところが法律上、個人事業と法人はまったくの別人格です。同じ社長が同じ場所で同じ仕事をしていても、税金も、契約も、許可も、すべて「新しい人」が始めたものとして扱われます。

ここを誤解したまま法人化すると、

  • 取れていたはずの融資が出ない
  • 持っていた許可が失効していて事業が止まる
  • 取引先との契約が宙に浮く

といった事態が、法人化直後に一気に表面化します。 法人化で失敗しないコツは、「リセットされるもの」と「引き継げるもの」を、最初に切り分けておくことです。

法人化で何が動いて、何が動かないか × リセットされる ① 許可(業種による) 建設業/産廃/古物/飲食 ほか ② 信用情報の蓄積 銀行との取引履歴・返済実績 ③ 取引契約 賃貸借/業務委託/リース ほか ○ 引き継げる ① 借入 債務引受の手続きが必要 ② 事業の実績 確定申告書3期分・取引先リスト ③ 自己資金 通帳の積立履歴ごとそのまま 最初にこの棚卸しをするだけで、法人化後の手戻りが激減する
図1:法人化で「動くもの」と「動かないもの」を切り分ける

リセットされる3つのこと

① 業種によっては、許可が失効する

最も見落とされやすいのがこれです。 個人で取った許可は、法人にすると原則として失効します。あらためて法人として申請し直すことになります。

代表的なものを挙げると:

  • 建設業許可
  • 産業廃棄物収集運搬業許可
  • 古物商許可
  • 飲食店営業許可
  • 一般貨物自動車運送事業の許可
  • 旅館業許可

これらの業種で「許可が下りるまでの数週間〜数ヶ月、事業を止める」と、売上もキャッシュフローも崩壊します。 法人化のタイミングを決める前に、「いま持っている許可は、法人化したらどうなるか」を必ず確認してください。

許可業種で法人化するときのタイムライン 法人化前 法人化日 法人化後 事業再開可能 × 個人で許可保持・営業中 許可失効 → 営業停止(数週間〜数ヶ月) 再開 個人で営業中・法人許可を並行申請 切替 法人として営業継続(空白期間なし) 許可業種は「法人化と許可申請を同時並行で動かす」のが鉄則
図2:許可業種で法人化するとき、何もしないと事業が止まる

② 信用情報の「過去」は引き継げない

個人事業として銀行と取引していた実績(返済履歴・残高推移・取引年数)は、法人にはそのまま移りません。 法人としての信用情報はゼロから始まり、最初の決算が終わるまで「実績のない新規法人」として扱われます。

このため、法人化直後は、

  • 公庫の創業融資は使える(創業者向けなので)
  • 民間銀行のプロパー融資は通りにくい(決算実績がないため)

という状態になります。個人時代に良好な取引関係を築いていた銀行があっても、いったん「新規取引先」として扱いがリセットされるイメージです。

③ 取引契約は一つひとつ巻き直しが必要

個人名義で結んだ取引契約(賃貸借、業務委託、リース、サブスク、保険など)は、法人化しても自動的には法人名義に変わりません。契約書を1本ずつ、

  • そのまま個人名義で残す
  • 法人に名義変更する
  • 個人で解約して法人で新規契約する

のどれにするかを、契約ごとに判断する必要があります。 特に店舗の賃貸借契約は、大家の同意なしに名義変更できないことが多く、思わぬ交渉になることもあります。

引き継げる3つのこと

① 個人時代の借入は、手続きを踏めば引き継げる

個人事業のときに借りた事業性のお金(公庫の創業融資など)は、「債務引受」という手続きを取れば法人に引き継ぐことができます。ただし、

  • 銀行(公庫)の事前同意が必要
  • 法人側に返済能力があるという説明が必要
  • 個人保証の付け替えなど、書類作業が複数発生

という流れになるので、法人化と同時並行で動かないと間に合いません

② 個人事業時代の「実績」は、融資面談で武器になる

信用情報は引き継げませんが、事業としての実績(売上推移・取引先リスト・確定申告書)は法人化後の融資審査で評価材料になります。 「数字のない新設法人」ではなく、「個人で○年やってきて、こういう実績がある事業を法人化したもの」として説明できれば、創業融資の枠が大きく取れることもあります。

ここで効いてくるのが、個人事業時代の確定申告書3期分です。これを丁寧に整えておくと、法人化直後の融資交渉がぐっと有利になります。

③ 自己資金は「貯め方」ごと引き継げる

個人時代にコツコツ貯めた自己資金は、法人化のときにそのまま資本金や役員借入として法人に入れられます。 このとき、個人時代の通帳の積立履歴が、融資の自己資金審査でそのまま使えます(融資面談記事の「自己資金は物語で渡す」参照)。

つまり、個人時代に自己資金を計画的に貯めていたこと自体が、法人化後の資産になります。

やってしまいがちな3つの失敗

失敗1:許可の取り直しを忘れる

冒頭で触れたとおり、これが最も致命的です。許可業種で法人化する場合、法人としての許可が下りるまでの空白期間をどう埋めるかが論点になります。選択肢は、①法人化のタイミングを許可取得後にずらす ②個人事業を残したまま、法人で許可申請を進める ③専門家に同時並行で進めてもらう──の3つ。どれを選ぶかで、事業の止まる期間が大きく変わります。

失敗2:個人借入を放置したまま法人化

個人で借りたお金をそのままにして法人化すると、返済原資は個人事業の売上から法人の役員報酬経由で出すことになり、税金面でも資金繰り面でも不利になります。法人化と同時に債務引受を進めるのが基本線です。

失敗3:取引先の名義変更を後回しにする

法人化したのに、得意先からの入金が個人口座に振り込まれ続けている──これは会計処理が大混乱する典型パターンです。法人化の前後で、主要な取引先には早めに法人化の連絡と契約巻き直しの依頼をしておくべきです。

法人化のベストタイミングは「お金が動く前」

法人化のベストタイミング ── 早いほどラクで安く済む 事業構想 大型契約・融資後 → 時間が経つほど、リセット対象が増える 構想段階 実績作り後 融資直前 × 融資直後 × 契約多数後 最初から法人で組める 実績が活きる 調整が難しい 引継ぎが二度手間 巻き直しが膨大
図3:法人化のタイミング評価 ── 「お金と契約が動く前」がベスト

シンプルに言えば、「お金や契約が大きく動く前」のほうが、法人化はラクで安く済むということです。 すでに動いてしまっている場合は、リセットされる項目を一つひとつ整理して、半年〜1年スパンで準備するのが現実的です。

まとめ

リセットされるもの許可/信用情報の蓄積/取引契約
引き継げるもの借入(債務引受)/実績/自己資金
最大の落とし穴許可の取り直しを忘れる
ベストタイミングお金と契約が動く前
鍵となる準備確定申告書3期分の整え方/個人時代の通帳の作り方

法人化は、「税金が安くなる」「対外的な信用が上がる」というメリットだけで決めるものではありません。 いま持っているもののうち何が引き継げて、何がリセットされるか──ここを冷静に棚卸ししてから動くと、法人化前後の事業はぐっとスムーズに進みます。

当事務所では、法人化シミュレーション(許可・借入・契約の棚卸し)、法人設立の手続き代行、許可の取り直し申請、個人借入の債務引受の相談同行、法人化と融資の同時並行スケジュール管理まで、一通りお手伝いしています。 「そろそろ法人化かな」と思った段階で、まず棚卸しから一緒に始めましょう。

「そろそろ法人化かな」と
思った段階で

許可・借入・契約の棚卸しから、法人化と融資の同時並行スケジュール管理まで、
法人化前後の事業を止めないためのサポートをします。初回相談は無料です。

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