銀行員が一番嫌うのは、リスケそのものではありません。
黙って延滞されることです。早めに、正しい順番で動くと、銀行との信頼関係はむしろ深まります。
毎月の返済が、そろそろ厳しくなってきた。 このとき、経営者がよく取る行動が、ギリギリまで黙っていることです。
「もう少しがんばれば、来月には何とかなる」
「相談したら、印象が悪くなるんじゃないか」
「リスケをお願いしたら、もう新規融資は出してもらえないだろう」
気持ちはわかりますが、これらはすべて誤解です。 銀行員の立場から見ると、本当に困るのは返済が止まる瞬間そのものではありません。困るのは、何も言われないまま返済が止まることです。
延滞が発生すると、銀行側では自動的に「要注意先」「破綻懸念先」といった内部区分の格下げが進みます。一度こうなると、戻すのに何年もかかります。 経営者が黙っている1ヶ月は、銀行内では取り返しのつかない1ヶ月になっているのです。
リスケ(返済条件変更)を申し出るベストタイミングは、まだ返済が止まっていない時点で、試算表を見て「3〜6ヶ月先に資金が尽きる」と気づいた瞬間です。
このタイミングで相談に行くと、銀行員はこう受け止めます。
逆に、延滞してから「実は…」と切り出すと、銀行員の頭には次の言葉が並びます。
同じ「返済が苦しい」という事実でも、伝えるタイミングで受け止め方が180度変わるのがリスケの現実です。
リスケを申し出るときに、ただ「返済を待ってください」とだけ言うのは、銀行員にとっては困る相談です。 銀行員は支店内で「なぜリスケを認めるべきか」を文書で説明する必要があります。経営者から、その材料が出てこないと、銀行員も動けないのです。
ここで出すべきが、経営改善計画と呼ばれるものです。体裁は問いませんが、最低限、次の4点が入っていれば成立します。
この1枚があるかないかで、銀行員が支店内で書ける稟議書の質が変わります。 リスケは「お願い」ではなく、「一緒に立て直すための具体的な提案」として持ち込むのが筋がよい打ち方です。
借り換えという選択肢もあります。複数の借入を一本化して、月々の返済額を抑え、資金繰りに余裕を作る方法です。
ただし、借り換えは経営状態がある程度安定していて、新規融資を受けられる体力がある会社にしか使えません。 すでに返済が滞っている、債務超過に陥っている、といった状態では、借り換えそのものが審査で止まります。
最も評価が下がる動き。前述のとおり、銀行内では一度格下げされると戻すのに数年かかります。
根拠のない楽観論を繰り返すと、銀行員から「現状認識ができていない」と見なされます。言うべきは「3ヶ月先までこういう資金繰りで、ここで詰まります」という数字で語る悲観論です。
俗にいう「自転車操業」。複数行から借りて当面の返済に充てる動きは、必ず後から全行に発覚し、信用情報全体が一気に崩壊します。リスケのほうがはるかにマシです。
| 兆候を察知したとき | 試算表を持って、早めに銀行へ相談 |
|---|---|
| リスケを申し出るとき | 経営改善計画とセットで「提案」として持ち込む |
| 立て直しの最中 | 計画どおりに進んでいるか、定期的に銀行に報告 |
| 数字が戻ってきたら | 借り換えで返済構造を組み直す |
| すべてを通じて | 正直に・早めに・数字で語る |
リスケは、経営にとって失敗ではありません。早めに正しい順番で動けば、銀行との信頼関係はむしろ深まることもあります。
逆に、隠していたものが破綻と一緒に表に出てきた瞬間、それまで築いてきた信用は一気にゼロになります。 返済が苦しいと感じたら、いちばん最初に動くべき相手は、銀行員です。
当事務所では、試算表ベースの現状整理、経営改善計画のドラフト作成、銀行への相談同行、借り換え交渉のサポートまで、一通りお手伝いしています。 「リスケかな…」と頭をよぎった段階で、お気軽にご相談ください。一人で抱え込まないことが、結果的にいちばん安いコストになります。